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2018年度事例検討会まとめ:宮本ゆみこ のびのびキッズ代表report

2019年3月事例検討会報告(2018年度)

事例の主訴は、嫌な事があると教室から飛び出す事が多い。
黙って学校から家に帰ってしまうこともある。
登校しぶり、教室入室しぶり多数。パニックが激しいいときはチックのような身体症状が出るようです。
課題は、
①感情のコントロールと感情の整理...
②教室で授業を受けられる事
と、されているようです。

学校では、嫌な気分やパニックになった時、クールダウンできるように、支援級をいつでも使える事、支援級には段ボールのトンネルもあります。本人はよく使っているそうです。

認知の特徴は、視覚処理優位。一方、聴覚処理は稀に大きな差で低いです。
このような場合は、状況に沿った言葉を添えるのが基本です。
気分を害したりした時の状況や感情を言語化しにくいので、支援級の先生は視覚的手がかりを使って丁寧にその都度振り返りをされているとのことです。
ポイント制度も使って、色々配慮や支援をされていました。

しかし、このように様々な逸脱行動は、発達の水準や認知特性からみると、
回避や逃避行動がほとんどです。
教室での授業は負荷が高すぎるのです。
支援級で出来る課題から積み上げて成功体験を積み上げていく事が先決だと思います。
ところが、本人自身が教室入室にこだわるとのこと。

そこで、先生が主導権を取る。

出てきました、毎回、このキーワードが!発想の転換です。

本人が出ていく前に、先生が言う。
「しんどそうやな。クールダウンしてきてもいいよ。落ち着いたら、また戻っておいで」

飛び出しが多いと、なんとかとび出さないようにとか、飛び出しが激しいと追いかけたりしがち。

先手必勝ですね。
この子、飛び出しには、注目要求も強く見られるので、校外に出てしまう場合は、追いかけないといけないけど、先生は無表情で追いかけ、戻ってきたときは褒めるが大事。

無表情で、っところがミソですね。

注目要求に応えるには、良い行動に対して。
脱走に大勢の先生が集まってくるより何か良いことで、先生たちが集まって来るようにするとか。
承認要求もとても強いようです。

因みに、障害が重い姉がいて、どうしても小さい頃から親の注目を取り合うので、愛着形成がうまくいかず、お母さんに甘えたい。
それで、姉とも激しい喧嘩が絶えない。
おうちでは、お母さんにハグして欲しがるそうで、お母さんもハグしてるそうです。

愛着形成に課題のある子は、言葉で褒めるよりも非言語で褒めた方が良いそうです。
笑顔やVサイン、ボディタッチとか。
他の子が褒められているとすごく妬むらしいです。そのくせ、言葉で褒めると嫌がるそうで。
難しいですね。

回避、逃避行動がおおいので、叱ることも必要。
ただし、肯定的に叱る。
「●●します。今は●●するときです」など。

放課後ディには週二回通っているので、そこではホッと出来る居心地の良さを提供してもらえ、学校での事を聞いてもらえて、共感してあげられるとベスト。
自閉傾向の子にとっては、学校だけで随分疲れるので。

以上ですが、ドクターは、体調不良を押して、参加してくださり、医療的見解をお聞きできました。ここで詳しくかけるほど医療的知識をまとめる事が出来ないので申し訳ありません。
やっぱり投薬って必要なんだなって思いました。

今回も伊丹先生や安原ドクターのコメントに目から鱗でした。
また、すごくセンスの良い先生方に見てもらっているんだなあと清々しい思いです。

子どもの行動にも自分の評価も100%ではなく25%で褒めていきましょう!

2019年1月事例検討会報告(2018年度)


今回の主訴は、学習意欲の動機付けアプローチという事でした。

背景情報から、
*運動発達の遅れが目立つ生育歴で、その原因の特定はできませんが、明らかに発達協調性障害が疑われました。書字、粗大運動、微細運動に影響が出ています。

*言葉の遅れがあり、特に擬音、擬態語、抽象的な意味合いをもつ表現の理解が弱いです。
特に社会的文脈での推理が弱いです。ルールの意味理解なども弱いのでしょう。

*聴覚処理のよわさがあり、本来は得意な算数も口頭で問題を聴くと成果を出しにくいです。

*負荷がかかりすぎると、不適切な問題行動が頻発します。回避行動の場合が多いのですが、時には要求の発散の時もあるようです。

【認知の特徴】
全般的な知的能力は平均の下域で、遅れはないものの、同学年の内容の習熟を今後も望むのは負荷が高い水準です。およそ2学年くらい下の内容の課題を出すのが望ましいかもしれません。

一方、学習の成果を図る習熟度は元々の能力よりも有意に高い結果を出しています。
このことは、これまで本人の努力はもとより、家庭、学校、塾と環境の支援の成果とも言えます。言い方を変えると、今後、学習内容の精選、負荷が高まらないような内容に変えていかないと、オーバーワークを起こしてしまうことが推測されます。

情報の処理に偏りはなく、先を見越して計画的に問題解決するのが最も強みです。
一方、学習内容を定着させて、必要に応じて検索し、学んだ事を応用するのは難しい場合が多いと思われます。
特に作文などは苦手です。
しかし、視覚的手がかりを使って、学習の見通しを持たせたり、例題など馴染みのあるパターンが分かっていれば、繰り返し学習して、定着させることは十分可能です。

【やる気にさせるアプローチ】
この子のばあい、問題行動は苦手な事、負荷が高い課題からの回避行動の意味合いが強い。
そこで、回避させないために、できる課題をさせる。

なので、学習面では2学年下げる。

3つくらいの課題を提示して選ばせる。
ただし、できる課題。褒めて自信をつけさせる。

回避の問題行動は、要求の発散にも使われている。
不適切な要求の発散には、適切な要求に変える必要がある。
不快な気持ちを、この子が得意な視覚的手がかりである絵などで表しす方法を指導する。
例えば、顔で感情を表すシンボルなどが有効かもしれない。

この子は、形を捉える力はあるが、それを扱うのがうまくいかないのだ。

他者とのコミュニケーションについては、諦めることも必要。対話は自分だけでもできると考えよう。例えば、独り言は自分との対話、読書は先人との対話。特に言葉の弱い自閉症の子たちには、これでコミュニケーションを育てていると捉えて良い。

大切なのは、

負荷をかけず、ありのままを認める事、

支援は、今だけではなく、将来の幸せのためにある事を忘れてはいけない。

まとめは以上です。

宣伝も十分ではなく、年明けでどれくらいの方がきてくださるか不安でしたが、新しい方も来てくださり、活発な意見を発信してくださいました。

また、体調不良をおして参加してくださった安原ドクター👨‍⚕️の医療的コメントもさすがです!

事例の子は、発達協調性障害でしたが、考えられるその原因は、この子の場合、3つあるということでした。

この子の運動発達や言葉の遅れを心配されたご両親は、乳幼児期から非常に多くの医療機関や療育機関に相談されているのに、このことを指摘されていません。
小児神経科医にかかっていなかったことが原因だということですが、私は、同じような状態像があった我が子との事を重ね合わせて、複雑な思いをしました。

2018年度11月事例検討会報告

今回の子の課題は、

①書字障害
②集中力持続の弱さ
③クラスへの集団参加
④パニックへの対応


同じような課題を持つ子は多いですね。

順番にポイントをまとめていきます。

その前に、事例の子の認知特性は、同時処理優位です。
言語・非言語ともに、個々の情報をまとめ上げる力が強く、
有意味刺激の視覚情報を活用すると、長期記憶が効果的に発揮されるタイプでした。

また強いこだわりがあり、回避・試し行動も多いです。癇癪は攻撃的な様相があります。

①書字障害の疑いあり。

とにかく書字活動は嫌がります。
絵を描くことは嫌がるどころか積極的に描きます。

学校での対応では、字をなぞらせていました。
連絡帳も漢字練習ノートもです。

これはほとんど意味がありません。

ただ、書くという動作の繰り返しで、書く動作には慣れる側面もありますが、
漢字を覚える事に繋がりません。

その証拠に、機嫌が良い時に、ちゃんとした内容を書いたということで見せていただいた作文はに、漢字はいっさい書いていません。
全てひらがなです。

年齢的には、ボトムアップの時期ですし、強いい力を使って指導することが優先されるでしょう。

同時処理と有意味刺激の視覚処理を使った漢字指導は、絵と一緒に覚えたり、
漢字を部首に分けて組み立てる方法が有効でしょう。

ただし、この方法にすぐ変更するのは慎重にしなければなりません。

こだわりが強いので変更に弱い為、認知特性にあっていても、学習回避になりやすいからです。

なぞりは減らして続けながら徐々に入れてゆくことが有効でしょう。

連絡帳の記載は、決まり切った内容が多いので、項目を書いてあるものをプリントして貼っておき、◯をつけるだけにしておき、必要があれば、数字など簡単なものは自筆で書けるようにし、負荷を減らすのが良いと思いましたます。


②集中力持続の弱さには、

機械的な繰り返し学習は出来るだけ避け、
絵やグラフなどの有意味刺激を使って考えさせる課題内容に変え、特に元々は得意だろうとおと思われる算数で成功体験を積み、動機付けを高める方が良いでしょう。

③クラスへの参加

認知の硬さがつよいため、当分はクラスに入るのは避けた方がよいそうです。
他の子と関わる時自分の気持ちを正しく伝える事が必要。
たとえば、
「自分は勝手に鉛筆を使われるのは嫌や」と、
相手の目を見て言う練習が必要。
それできるようになれば、クラスにはいれる。

④パニックや癇癪への対応

突然の変化は少なく。
予告や見通しを示す。安心させる。

パニックや癇癪を起こした時は負けない。

不適切な行動には、「消去」
反応しない。

不適切で著しい暴言やマイナス発言には、リフレーミング。
逆の正しいことを言って関わらない。

●指示の出し方

どうしたら良いか先に言う。
「走ってはダメ」→ 「歩きます」

私メッセージを使う。
「あんたはいつも片付けない」
→「おかあさんは、片付けて欲しい。」

自閉特性の子は、

間違いを修正されるのは嫌。
怒られすぎるのも良くない。
攻撃的な癇癪やパニックが多いのは、親からの感情的な叱責や言い方が背景にある。
親や支援者がイライラする時は、6秒まつ。
怒りのマックスは、6秒だから。

子どもの場合は、好きなキャラクターの名前などをとなえさせる。

以上です。
次回は、1月10日です。

2018年度9月事例検討会報告 



今回の事例は、両コメンテーターの先生とも、ASDはなく、愛着障害による症状だと断言されました。

ドクターからは、ASDと愛着障害の鑑別の違いについて簡潔に説明していただきました。

伊丹先生からは、事例のお子さんの得意な認知を使った指導や親御さんへの暖かい具体的な励ましをいただけました。

ずっと対応に悩んで来られた親御さんは、ビックな先生からのコメントに肩の荷が随分おりたとおっしゃっていました。

まず、
●ASDと愛着障害の違い

事例のお子さんの生育歴、特に乳幼児から幼児期に自閉症状は見当たらない。
「人懐っこい」子は自閉の子にもいる。
しかし、人見知りがない自閉っ子は、親への愛着は見せない。
特に、2歳以内にDVをされたり、目の前でDVを日常的に見ていた場合、一番ダメージを受けやすい。更に措置によって親から隔離された期間が長いと愛着障害になりやすい。
どうしても、親から離す必要があるときは、信頼できる愛情をもった人に預けるのが良いが、

(以前の事例でも、病気で1年も乳幼児期に入院していた子の行動障害の背景に愛着障害があると言われていました。なお、DSM-5では、5歳以内にDVがある場合、愛着形成の阻害が起こりやすいとあります。)

更に、愛着障害の子には、物を与えても、褒めるなどの報酬は効果が現れにくい。
投薬と愛情を注ぐしかない。
(詳しい投薬についての情報も説明を受けました。)
時間をかけて根気よく。
分離不安を抱えて母親にまとわりつくなら、
スキンシップはした方が良い。
他の女性にはしないように指導は必要。

伊丹先生からは、
●愛着障害には、共感、完全受容によって信頼関係を取り戻す。
信頼関係が落ち着いてから、服薬を説得。
(現在、服薬を拒否)

感情の言語化が必要。
状況に応じた感情を代弁する。感情の公式。
「●●だから、イライラしたんだね」
親は、子どもの感情爆発と荒れが怖くてビクビクせず、少しづつ主導権を取っていく。
例えば、抱きついてきてすぐ抱くと子どもに主導権を取られることになる。
ちょっとまたして抱けば、親が主導権を取ることになる。

この子は、同時処理が非常に強い。
言葉ではなく、非言語化で褒める。

役割を与える。
誰かの為に自分が役に立っていると思える環境を整える。小さなことからで良い。

生得的なものではなく、生育的な問題。

最後に、シングルで生活を支えている母は、仕事をセイブできない悩みを相談。

「母親が働くことも子への大きな愛情、信頼できる複数の大人を探すことが大事。」と、伊丹先生

今回もご参加いただき、一緒にい考えてくださった皆さま、本当にありがとうございました。

事例の子は、あの長いKABC2の検査を意欲的に取り組んでくれました。検査はじめは挑発的な言動で検査者を探っていましたが、警戒が解ければ可愛い3年生です。
大丈夫🙆‍♀️ まずは棘のような挑発言動に乗らないことかな。
支援者は、我慢と根気。

大坂なおみ選手が勝てたのは、スキルはさることながら、「我慢」だったらしい。
素晴らしい!

因みに、愛着形成のタイプには4つ

安定型
回避型
葛藤型
無秩序型

があるそうです。
今回の事例の子は、葛藤型に近いのかなあと思いました。



2018年度7月事例検討会報告 



発達水準が平均より低いASDの小2男子の学習支援についての検討会でした。

背景情報によれば、幼児期は予定外の事や、はじめての経験、人などへの臨機応変な対応が苦手で、癇癪やパニックが激しく、事前に対応できる事はあっても、全く原因がわからない癇癪や泣き出す事も多っかたということですが、環境整備がよかったのか、小学校ではかなり落ち着いて過ごせているようです。

家庭でのサポートもあり、これまでなんとかクラスの授業内容についていけたそうですが、学習内容が進むに連れ、充分な結果を出せない事が重なり、

「僕、100点はもう取れないかもしれない。だって、すぐ忘れてしまう子どもだから」とか、
「僕は普通じゃないの?」
という発言も漏らすようになった事が親御さんの動揺や不安を掻き立てます。

検討会では、本人の自尊感情を低下させない視点や対応、お母様の葛藤の捉え方などについてグループ毎で話し合いました。

検査結果からわかる認知の特徴は、端的に言うと、部分と部分をつなぐ事が苦手。
だから、支援の視点は「つなぐ」でした。
また、従来は、課題をする子、指示に従う子が良いとされた子ども像でしたが、これからは、主体的な行動ができる子が望まれる。

そのためには、

⭕️
選択肢の中から選ばせ、自己選択、自己決定権を尊重する事。選択肢については親はいっぱい口出しして良いこと。

⭕️肯定的な自己認知を深める事は、診断名を伝えることではない。
自分の長所と苦手を知り、苦手なことにはどのように対応したら良いか知ること、それを教えること。
⭕️支援者は、注目、認める、共感、褒める事が大事。

ずっと注目してあげて、自分で決めた事は認めて、マイナスな事を言った時は、揺らがず、「そう、そう思ったんだ」と傾聴し、気持ちに共感、「じゃあ、こうしたら上手くいくかもよ」と、提案してゆく。

⭕️
結果ではなく、努力や取り組む姿勢を褒める!

と、この子への対応のエッセンスをご指導いただきました。

今回も支援者として基本的なスタンスを簡潔に、深くコメントしてくださいました。

とっても、とても、大事な言葉を改めて心に刻んでおかないといけないと思いました。
重複になりますが、今回の伊丹先生語録をいくつかご紹介しておきます。

「結果を笑顔で褒めるのではなく、
努力を笑顔で褒める」
「生まれながらのやりにくさがあるのは症状、その為に生きていくのが大変な時に障害。つまり環境によって障害となる。」

これについては国際生活機能分類ICFに、障害とは何かという定義がしっかり示されています。
「共感とはこちらが揺るがない事」

学習課題の内容については、「発達水準が平均より低い場合は、大きな遅れはないが、だからといって、自立に役立つ直結した内容に絞れば良いというわけではない。
今、やっている内容が次につながるか、将来役に立つか、この問題をやらせてどうなるということではなく、それをやらせた結果、子どもの反応はどうかという事がポイントだ。」

深い! まあ、年齢にもよるのでしょうが。
でも、基本ですね。子どもがその課題をどのように受け止めたかですね。だから、選択肢をいっぱい与えて、主体的に学習に向かう気持ちを育てる事なんですね。それ忘れがち!
結果ではなく、子どもがどう向き合っていったか、でした!そうだそうだ、そういう事例いっぱいあった!ここが他の専門家と違う伊丹先生の揺るがない支援スタンスだった!

更に、いつもながら保護者の迷いや葛藤を決して責めず、肯定しながら、認めながら、
とどめをさして、気づきを入れる!プロフェッショナル、仕事の流儀に心から推薦したい!

お母様へのとどめの一言は、「子どもの自尊感情を高めるには、
親が自尊感情が高くないと!充分、お母さんは頑張ってこられた、今だって凄く頑張っておられる。自信を持ってこれからも、注目、認める、共感、褒めるを続けてください!」

伊丹先生の言霊はぜひライブでご堪能ください!
今回は、安原ドクターのぶっちぎり発想展開が聞けず、寂しかったですが、次回はぜひ来て欲しいです

2018年度5月事例検討会報告 



今回の事例の子は高校2年生女子。

思考力、記憶力、知識量が高いのに、作業的な処理速度が低いと読み書きに影響を与えがちな事例が多いです。

今回は、書字障害の上に、本人の思いやこだわり的思考が強く、他者からのアドバイスをすんなりと受け付けられにくい傾向があるので、色々と課題提出の代案提案をしても、本人が納得しないことには支援が難しいケースです。

ドクターの表現をお借りすると、「自分で考え、自分で決める」タイプです。

また思春期特有の目立ちたくない、自分で言うのは構わないが、先生たちには周りの生徒にわからないように必要な聞き取りや確認をしてほしい、と、恥じらい深い年頃への配慮が必要です。

さらに、聴覚や視覚で諸々の過敏さがあり、過集中していたり、気持ちが元気な時はエネルギー全開で頑張れますが、長続きしません。
頑張った分はドン!と疲れが襲います。

高校の友達は好き、苦手な教科はあるけど、好きな芸術活動ができる今の高校は好きだけどエネルギーの調整ができず、順調な登校や課題提出ができない、このままでは、進級が危ぶまれる、出席日数、課題提出の負にが軽い代替案はないものか、という検討会で、たくさん集まってくださった方々のお知恵を借りた検討会となりました。

会場から出された代替案は、伊丹先生がまとめてくださりました。
以下です。
なお、現在、高校では実に細やかな支援や配慮をしてくださっています。

*課題提出やノートテイクに、今以上にICTを使う。登校しなくても授業を受けられるようにビデオ、インターネット回線でのリアル視聴やスタデイサプリを使う。
*得意な事で代替。
*「〜しなさい」ではなく、提案型で。
*ノートはいらない
*苦手な体育は、服を着替えて、別の場所で運動。

何より困っている子に特化するのではなく、全体に配慮がある事を伝えていくユニバーサル支援視点が大事。
また、配慮というのは、努力の結果と取れるようにすることが基本。ただし、本人ができる努力をさせること。
とってつけたような配慮は、特別扱いになる。

以上を念頭に、ドクターの診断書を添えて、全教職員の理解を深め、保護者と学校の先生たちとの合意形成をしっかりして取り組む事が肝要!と、締めくくってくださいました。

また、ドクターからも、自己認知を鍛えるためにもカウンセリングの必要を強く促されました。

以上です。

■2018年度3月の事例検討会報告

中学進学を控えた6年生男子

今回のケースでは、学習障害だけではなく、愛着障害からきていると思われる行動の荒れや情緒的な不安定さが大きな課題です。

中学からの支援級在籍は抵抗感が強いのと、検査結果からも、実態把握の結果からも、環境からも中学で学習の遅れを改善することは期待できません。

だとしても、中学でできる支援を我慢強くお願いしていくことが必須な事例でした。とてもとても難しい事例です。

結論から言うと、伊丹先生から次のようなコメントをいただきました。

基本的にGAI〉CPI の傾向が強く、中でも
ワーキングメモリーの強みからは、機械的な記憶や記銘は強いけれども、ちょっと複雑な指示や説明はわかりにくい特徴があるので、刺さる言葉が効果的。

さらに、愛着障害からくる影響を考えると、非言語メッセージ(焼きつく絵)で褒めるのが良いというのが印象的でした。

まとめておきます。

①キーパーソンを決める。
若い同性のボランティア学生などが適任。友達感覚でよい。
1対1の関係から信頼関係を築く。

②感情の言語化

肯定的な内容で感情の公式を使う。

③主導権をとる。

難しいことではない。例えば、トイレに行きたそうにしていたら、「トイレに行きなさいlと言う。

④役割付与支援

次回は、5月10日です。


2018年度1月事例検討会報告 

テーマは、男子の性的成長?に関するトラブルの捉え方と対応の基本です。

好きな女子の持ち物への関心や執着の強さが招く不適切な行動がエスカレートしており、必要な自立訓練もままならないという主訴でした。

学校としては、指導を繰り返しており、本人も不適切な行動だと理解はしているものの、止めることができない、という事でした。

こうした多くの場合で言えることは、「●●をしてはいけない」というダメ出しが指導の中心になり、「○○なら、しても良い」とか、「○○しなさい」と言った肯定的な指導がなおざりになりがちな事かもしれません。

もちろん、事例の学校の先生達は、そういう事も含んで指導を繰り返してこられたと思うのですが、上手くパズルのピースがはまらない焦りを抱えておられるようでした。

しかしながら、事例の子の学校から若い7人もの先生が来ていただき、会場からの厳しい意見にも謙虚で熱心に参加して耳を傾けてくださっています。

本当に有難い思いでいっぱいで、長年続けてきた事例検討会の重みを感じています。

さて、事例に即して考えると、

異性に関心を持ってきたことは喜ばしいことですから、受け止める側は、その関心を適切な行動をモデリングしてロールプレイする事を実践するべきという意見がでました。

検査結果からは、長期記憶と検索がもっとも強いので、口頭で言うだけではなく、モデリングしてロールプレイすると、知識として定着して運用しやすいからだそうです。

具体的にいうと、

①性的な興味には、犯罪にならないチラ見を教える、というものでした。

どんなチラ見って?

それは、ここではお伝えしないでおきます。参加された方だけが知っている事にしておきます。

また、どこまでが許されるチラ見か、学校と家庭で共通認識しておく事も忘れたくない事です。

②不適切な行動には、両立しない分化強化を使う。

応用行動分析の一つのスキルで、不適切な行動ができないような環境を作って、褒めて成功体験を積む事です。これは、口頭での修正だけではできません。

例えば、教室移動中に女子に触ったり、壁や物を叩いて迷惑な音を立てるような時、そのような不適切な事に手が使えないように、仕事や役割を与えます。教科や活動に必要なツールを持たせて運ばせるということです。

役割を遂げることができたら、みんなの前で褒める。

それをきっかけに、その仕事を自主的にかってでるようなら、しめたものです。

③他の楽しみを作ってゆく。

背景情報を読むと、学習能力は高く、支援学校で学ぶ内容は退屈で、しかも同年齢の男子との関わりも充分ではありません。

他に楽しみがないから、性的興味に執着してゆくことも考えられるというご指摘も受けました。

そこで、
学校だけの仲間作りにこだわらず、好きな電車の仲間と関われるような集いに参加するなどして、外に仲間を求めるのも、性的興味を緩めていく事に繋がるはず。

もちろん、学校行事の中で、男子同士の関わりをコーディネートする事も可能。男の若い男性教諭も何人かおられるようなので、一緒に遊んだり、つるむ事も大事では。

ここで、伊丹先生から、大事なコメントをいただきました。

「楽しみというのは、例えば、けん玉の達人と一緒にやっても面白くない。
下手だけど、実に楽しそうにけん玉している人と一緒にすると、楽しいとおもうものだ。」

本当に、その通りですね。

次のようなこともよくいわれますよね。

「成績優秀な人が必ずしも上手い指導ができるわけではない。落ちこぼれで勉強してきた人の方が教え方が上手い事がある」

④背景情報から、前頭葉の機能不全からと思われる衝動性も大きいと思われるので、抑制力を高める投薬の必要を安原Dr.からアドバイスいただきました。昨年は、コンサータとストラテラに加えて、インチュヌブというお薬もふえ、その思わぬ効果も臨床で確認されてきているようです。この辺りの情報が聞けるのは、Dr.がいてくださるので、本当に有難いです。

また、安原Dr.からは、性の不適切な行動を理解してくれる医師は基本男性じゃないと理解しにくいと思う、男性でも真面目一方の医師は避けた方がよいとのご発言あり、ご推薦していただいたDr.のお名前も記憶させていただきました。さもありなん。

⑤興味のあるものを強化子にすると、事例の子の場合は、それに執着してものすごい量になる。例えば、気になる女子の持ち物に触るのはダメだけど、同じものを買ってあるのなら、写メで撮ってそれをカタログ化して冊子にしてみるのはok!
また、同じものを買うのも個数は制限しておいた方が無難。特性から際限がなくなるので注意、とDr.からもアドバイスいただきました。

⑥告知の課題について。

思春期までには、自己認知をやっておいた方がよい。
診断名を告げるのではなく、自分とは何者かをを知る事だ。

どんな得意があって、どんな課題を持っていて、それをどのように乗り越えたらよいのか、具体的に伝えることが大事。

Dr.からも、たまに診断名を告げることはあるが、課題に肯定的に向き合う具体的な方法は必ず伝えるということでした。

今回は、フェイスブックへの投稿記事の反応数が極端に少なかったのですが、いつも通りたくさんご参加くださり、ありがとうございます♪

非常に活発な議論が飛び交い、いつものように逆発想豊かな安原Drや、ウィットに飛ぶ伊丹先生の返しが溢れて、和やかで楽しい検討会ができました。



大阪ADHDを考える会 
のびのびキッズ