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2021年事例検討会:宮本ゆみこ のびのびキッズ代表


●2022年3月10日事例検討会報告

 行為障害など逸脱行動を子どもが繰り返し、親の指導が入らない時、親は本当に苦しむ親でありながら子どもを救えない、あるいは人としてあるべき姿を教えられない無力さにすくんでしまう。

 目につくのは、子どもの不適切で許せない行動ばかり。褒めろと言われても、注意や制限をしたいことばかり
信じてあげてと言われても、何度も裏切られたと思っている親には、何を信じろって?と白々しく受け止めるだけ。
加えて、ちょっと注意や小言を言えば、
うっせい!死ね、くそ親、などと暴言を吐き、時には躊躇せず暴力も出して暴れ回る。
そんな姿を何度も見せられていると、不快な感情に親は日々侵食される
何度も何度も,負の感情を抑え、漠然とした心配は異様に募り、常時、咽喉が渇く、
でもね、理由なく思春期の子は荒れない、きっと、ね。表に現れている姿や逸脱行動は、
今の彼らの出口が見えないための表現だとまずは理解したい。

 それに、よくよく観察すると、本当はすごく寂しくて甘えん坊で、
震えているかもしれない、嘘も自分を守るための自己防衛、
偉そうにしていても、所詮、まだ幼く、親に依存する存在、
だから、こどもの親攻撃言動に惑わされず、ぶれないで。言わせておけばいい。
下手にいちいち反応するのは、強化するだけ、
親として衣食住はちゃんとやってきたし、
我が子は可愛がってきたと自信があるなら、
無駄に傷つく事無いと思う。完璧な親なんていないし、完璧こそ、息苦しい。
軌道修正すれば良い。

 今から出来る事を、やるべき事をやっていこう
褒めよう!褒める事を探そう!必ずある。認めよう!思春期の子には禁止は効果なし。
ただし、物やお金要求には、努力して得られるように主導権をとる
頑張ったらご褒美を設定し、動機付けを高めよう!
ちゃんと向き合って話し合い、こどもの思いを共有しよう!
こどもは、幸せに生きたいと思っている、その気持ちを信じて関わろう!

2022年1月13日事例検討会報告

 今回の事例検討会は、上手くいっている事例を会からお願いして開催しました。
 数年前には、命の危険も感じられた事例でしたが、大学の合理的配慮がユニバーサル支援で,当たり前に行われている事で、本当に笑顔で充実して今を暮らしているようです。
検討会も終わりに近づいた頃には、大学生になった彼女がちょうど大学から帰宅して顔を出してくれて
「お陰様で、今はだいぶ元気になりました」と大人の対応。
そうだね、もう20歳だもんね。。。。。

 過去の事例検討会で出た支援策を改めて読んでみると、書字障害には、ict活用、
コロナ前なのに、すでに「リモートで授業をうける」、更に、ユニバーサル支援がポイント、
という事が出されていました。
 残念ながら、当時の高校にはいくら働きかけてもピンとこないようで、思うような支援は受けられず、
彼女は苦しみました。結局、高校は退学。

 でもそこからが、それまで以上に、両親は彼女と真摯に向き合い、
特性や興味関心を見据えて、自己肯定感を上げるためにピンポイント支援で実行され、
見事、彼女は息を吹き返していきました。元々、彼女は知的好奇心が高く、言語性が高く、
知識欲や情報量、推理力,想像力は相当なものです。

 ご両親の子どもへの教育熱は高く環境は羨ましい、素晴らしいに尽きます。
ところが、こんなに才能溢れる子どもは、ともすると、集団では厄介者扱いされることがあります。

 ある校長先生が
「これからは、多様性の時代です。皆、一丸となって取り組みましょう!」
と、檄を飛ばされた。
 
 多様性と一丸
これは真逆の概念、そのことに気がつかない。似たような現象はそこここにあって、
ご都合主義のダブルバインドで溢れている。その事が、学校が苦しい場所になるのです。
また、「学ぶ」事の意味を改めて私たちに問いかけてきます
勉強は大事だし、学校に行けるならそれは有難いです。でも、勉強は学校の宿題だけではないはず。
学び方は、一人一人違うはずです。

 さて、最後に検討会で締めくられたコメンテーターの伊丹先生の名言をまたまたご紹介しておきます。

♥瀬戸物と瀬戸物をぶつけると、すぐ割れます。
 親は、スポンジになって、子の言い分を吸収して受け止めてあげてください。辛かった時期の思いや親への恨みももっと吐き出させてあげてください。

2021年11月25日事例検討会報告

★愛着障害から来る学校での不適切行動の理解や対応の基本
 中学2年男子 小学生から施設入所で育つ。ネグレクトからの愛着障害と思われる。
愛着障害とは、育ちの中で自立するために必要な、安全、安心、探索の三つが
養育者との間に健全に育っていないことから来るさまざまな不適切行動の症状。

 本来、子どもが養育者との生活に居場所として安全を得られず、養育者との関係性に安心を抱けず、
自分の興味関心を探索することを遮られたり、否定され続けられると、恐怖や混乱は増大することから、
防衛反応としての不適切行動が大きくなり、深刻な場合は、解離も起こる。解離には投薬が必要。
医療的ケアも必要。
そのため、この安全、安心、探索の3つを作り直す作業が必要で、愛着形成への取り組みが必要。
愛着形成には、基本的に一対一の関係性の中で、安心をもたらすキーパーソンとの関係作りが必要だが、
本事例でキーパーソンを決めるのは非常に難しい。学校では担任もクラブ顧問も集団を指導しないといけないからだ。個別に関われる学生ボランティアなどの支援は可能。 

 不適切行動の指導は予防が基本、コツは、子どもが望む事の先手を打つことで、主導権を支援者が取ること。
子どもとの言い合いや、子どもが非を認めないことなどの勝ち負けにはこだわらない。
理不尽な言い分や、嘘、作り話などには、
「そう思っているんや、しかし●●は、危険だから認められない」などと共感しつつ、
だめな事はダメと毅然と伝える。「こんどだけ」などと一貫性のない対応はしない。
この辺りのことは、校内であらかじめ連携して、対応が人によって違ったり、その場限りにならないようにする。

 愛着障害の子には特に傾聴が必要
「意欲は能力に優る」
子どもの不適切行動の中にも、意欲を駆り立てるリソースはある。
事例で言えば、わざと砲丸を投げる危険な行動を、危険度が少ない「投げる競技」を勧めて、意欲喚起。
説教,叱る,小言、ため息、眉間に皺などは逆効果(これらは、発達障害の子への対応も一緒)
 愛着障害の子には、言葉より非言語での褒め方の方が効く。 
そして支援者は褒めたことによる子どもの感情に期待しないことも重要。 
そもそも感情の健全な認知が弱い。感情のラベリングが必要。
「みんなと一緒に走れて楽しかったね」「掃除してさっぱりしたね」などの言葉かけも重要。

 以上、とても充分なまとめとは言えませんが、当日の安原ドクターや伊丹先生のコメントと、
私見も交えてまとめてみました。
 今回は、伊丹先生が愛着障害の説明をパワーポイントでコンパクトに要点をまとめて
講義レジメも用意してくださり、質疑の時間もたっぷりとっていただきました。
少しの時間でしたが、グループに分かれて意見交換もしていただけました。
また応募いただいた学校の先生方には、貴重な事例を出していただき、大きな学びをいただきました。
ありがとうございます。

 すっかりリモート事例検討会を定着させてしまいましたが、対面と違う不便は多々あります。
それでもリモート開催の便利さも計り知れないです。
いろんな意味で、価値観や常識が変わり、生きやすさが増えることに繋がると良いのに、と思います。

2021年7月の事例検討会報告

 昨日の事例は、学校をでた青年期に差し掛かる親の子どもの受け止め方というか、そんな課題でした。

 特に大きな問題を抱えているわけではない。でも、学校は残念ながらいけなくなって中退。
居場所が欲しいと言う子どもの願いを受けて、どこかないかと親御さんが探した若者サポートステーション。
 初めの頃は熱心には通わないことも多かったけど、一年立つ頃から週3回、熱心に通うようになった。
サポステから帰ると、表情はスッキリしている。でも、不安を口にする。このままどうなるのか。
サポステはたしかに居心地が良い、でも、今のままじゃ、中卒大丈夫なのか。
漠然とする将来への不安を抱えている息子を見ると、母もまた、漠然とした不安に揺れる。
今も家庭では、困った行動に振り回される、もしも、もっと荒れたらどうしよう。
何かしないといけないんじゃないか

 そんな感じでの応募だったと思います。
Zoomですが、今回は参加者をグループわけして少し話し合いの時間をもってもらいました。

 当会の保護者の参加は少なかったですが、同じような悩みを持つメンバーとの話が盛り上がります。
問題行動の解決って即効性がある対応はなかなか無くて、
ピンポイントに気になる行動の改善って無理と思った方が良いのでしょう。
表面的な困った行動に囚われる限り、子どもの成長や根底に潜む思いに親は気付きにくいのだろうと思います。

 伊丹先生のコメント「困った行動が愛情表現なら、適切な愛情表現に変えて対応する」

 適切な愛情表現に転換?
「目を見て、話してごらん」と言ってやって。
う〜〜ん難しい。さらに、脳内深掘り。
不適切な子どもの愛情表現が来たら、
「母ちゃんが好きか、この甘えため、なんや、なんか聞いて欲しいことあるんか?
母ちゃんの目見て言うてごらん」と、面といえば、
きっと、「なんやねん、何言うてんねん、あほか、」と、すごすご退散するかも。

 ところで、今回の大きな収穫は、子どもさんが一年半以上通っている地域の若者サポートステーションの
担当の方が,非常に親身になって支援してくださっていることが、明確に親御さんに伝わった事です。
担当者のTさんの子どもさんを観る真っ直ぐな眼差しと、前を向くまで粘り強く見守る寄り添い姿勢。
何より、表面的な事柄や言動や、一部の情報に偏らず振り回されず
目の前の子どもの思いや願い、今の姿に向き合う、カウンセリング
そして、子どもの背中を押す絶妙なタイミングを測る判断
もちろん、空振りになることも想定ずみ。

「支援とは、線路は支援者が轢いても、走っているのは子どもだと思わせるのが望ましい支援」
むか〜し,昔に聞いた月森先生の言霊が甦ります。

 また、今回は就労についての公共の福祉制度や事業所を調べてみました。
調べてみて、改めて、相談するところは沢山あって、手帳がなくても相談できるところは結構あるんだと思いました。
何より、若者サポートステーションの就労プログラムってすごいなあと思います。
定着支援事業もされているし、これ公費で無料はすごいですね。

 ちなみに、一般就労を目指す人への支援をするところがサポステとはいえ、
利用者の90%は発達障害だと聞きます。
ということは、クローズで就労を目指すということ。
経験的にも推測するにも、クローズはオープンよりも苦労するのは明確。
だから就労での困りごと支援に、キーパーソンを見つけるようにアドバイスするとおっしゃっています。
せっかくの就労で、キーパーソンが突然いなくなって働けなくなったというケースも聞いたことがあります。
障害者差別解消法案が出て、オープンにすれば、合理的配慮は受けらる法律がありますが、
クローズだと難しいですね。

 そんな事も承知の上で、制度的にも利用しやすい柔軟性を持たせた制度ですね。
しかし、大事なのは担当する方のセンスと利用者さんとの相性?   
良い制度を作って、場所や空間を作っても、そこで働く人が、利用者さんとちゃんと向き合わないと、
方向性を見失っている利用者さんの道標にはなれないでしょう。
 事例の子は、とても素晴らしい支援者に恵まれています。親だけで育てているのではないし、
当然だけど、親は万能ではない、親も揺れ動く。
そんな中で、子どもを信じてくれる人がいると言うのは、本当に救われます。

 なお、親は子どもにどうなって欲しいのか、なぜ、そう思うのか、
それは子どもが望むことか、条件付きの子どもへの期待という呪縛を解き放って。
親として子どもの何を守らないといけないのか、この親自身の自問自答は続くのでしょう。
くどいですが、
「子どもを信じる」という意味も、それぞれが向き合うべきテーマだと思います。

2021年5月13日事例検討会報告

 今回のテーマは不登校している兄と妹の対応についてでした。
今回も安原ドクターが参加してくださり、詳しいことはここでは出せませんが、
背景情報から鋭い医療的見解を展開してくださいました。

 よくASDと愛着障害との鑑別が難しいと言われますが、どこが違うかも背景情報から指摘してくださいました。
これまでも愛着トラブルの事例が多かったですが、今回のポイントを簡単にまとめておきたいと思います。

①ADHDやASDには褒める事が行動の意欲つけになるが、愛着障害には、褒める事は行動の意欲つけにはなりにくい。だから登校を促すのに褒めても効果は薄い

②愛着障害に必要なのは、愛情をかける事。必要な時期に充分に受け入れてもらえなかった思いを取り戻す事。容易ではないが、環境を整える。

③罰はしない。ただし母親だけではなく関係する大人への、ためし行動が頻繁。好ましくない行動には応じない、許さない。例えば適切な無視を使う。好ましい行動には注目して反応する。

④家族で一貫した対応をとる。応用行動分析を家族で勉強する

⑤登校にこだわる時期ではない。愛着を取り戻す取り組みをする時期。勉強はいつでもどんな形でもできる。今、無理矢理させることは状態を悪化させる。学校からの働きかけも少なくして登校刺激は与えない。高校に関しては、配慮がシステムとしてあるはずだから
それを活用しつつ、単位を取らないとどうなるかは正確に伝えることはした方が良い。

⑥感覚過敏には適切に和らげる事を優先して対応する。

 以上、安原ドクターと伊丹先生のコメントをまとめました。
環境を整えるというのは簡単ではありません。しかし、背景情報には素晴らしい宝があると思いました。
夕飯は家族揃っていただく習慣が根付いているのです。
子どもたちは嫌がっていないというのです。
だとしたら、この食卓を囲む場を決して争いや説教の場にはしない努力をご家族が守る事だと思います。
色々あるけど、家族と囲む食卓が穏やかなら、他の場面でもその努力は活かさせる方向に動くのではないでしょうか。

 「精神的に苦しい状態にあったり、何事にも投げやりで意欲が減退していても
人には潜在的な成長力や自己実現への欲求があると考え
自分の経験をあるがままに自己に取り入れる事ができる。それができる人が健康な人である」
と、クライアント中心主義のロジャーズ先生も言っておられるそうです。

 伊丹先生が、兄の自立を心配されていた母に
「子どもを信じましょう!」と諭されたのに通じると思います。
また、ご家族も支援機関の方々も学校の先生方もご参加いただき、このご家族は、ありのままの佇まいで、
周囲に優しい支援者ががたくさんおられる事も宝だと思いました。
色々な思いを共有させていただきました。

 どうぞ、感情をぶつけ合って、スマートボールのように、投げられたボールが
一人一人の家族に当たってやり場のない思いの深みにはまらない事を祈ります。
 
伊丹先生がいつもおっしゃいます。
犯人探しはしない。
 「出来事そのものがあるから悩みを引き起こすのではなく、出来事の受け止め方が悩みを引き起こすのだ。」
これは確か、エリスさんが唱えたABCDE理論のことかな。
だから、自分の物事の捉え方と向き合い、違う角度から見直して検証する事が大事なのでしょうね。ありがとうございました。

大阪ADHDを考える会 
のびのびキッズ